白木祭壇は、ご葬儀の中で最も人の想いを映し出す場所です。
その白木も年月を重ねるにつれて、日焼けや経年劣化により徐々にくすみや黄ばみが生じていきます。
そこで必要となるのが、私たち葬祭スタッフが行う「洗い」と呼ばれる伝統の再生作業です。
今回は、実際に行った白木祭壇の洗浄・漂白・修復の工程をご紹介します。
1.分解と洗浄──木に眠る光を取り戻す
長く使用された祭壇を分解するところから作業は始まります。

木材一つひとつに刻まれた細工を傷つけないよう慎重に外し、白木専用クリーナーと水で汚れを落とします。


この日は気温8度。冷たい水に手をかじかませながらも、スタッフたちは白木の呼吸を確かめるように磨きをかけていきます。
照明窓に貼られた障子紙を剥がす作業も容易ではありません。
木目を痛めないように少しずつ丁寧に剥がし、全体を洗い終えたあとはしっかりと乾燥。
木肌が徐々に息を吹き返し、少しずつ柔らかな白さが戻ってくるのがわかります。
2.漂白と修復──失われた白を甦らせる
乾燥を終えた祭壇には、次に「漂白」と「修復」を施します。
専用の漂白剤をエアーブラシで均一に吹き付け、ティッシュで液だれを拭き取りながらムラを防ぎます。
薬剤が浸透していくうちに、赤みを帯びていた木肌が少しずつ本来の明るい白へと変化していく様子は、まるで木が再び呼吸を始めたかのようです。
この作業には、経験と感覚が求められます。
気温や湿度、照明の角度、手の温度――わずかな差が仕上がりに影響するため、五感を研ぎ澄ませながら木と向き合います。漂白の後は、細かな傷の補修や飾り部品の修復を行い、木肌の表情を整えていきます。
3.組み立てと完成──再び舞台へ
漂白と修復を終えた部材は、いよいよ再び一つの形に。
丁寧に組み上げられ、新しい障子紙を貼り、照明はLEDへ交換。
傷んでいた部品を新調し、やすりで細部を磨き上げます。
作業時間は約15時間、2日半に及びました。
再生を終えた白木祭壇は、まるで新しい命を得たかのように、清らかで凛とした姿を取り戻しました。
人の想いを包み込み、また次のご葬儀で心を込めたお別れの舞台となります。
想いと伝統をつなぐ
白木の洗いは、単なるメンテナンスではありません。
そこには、故人を送り出す「祈りの場」を大切に守り続けるという、私たち葬儀社の使命が息づいています。
寒さの中でも手を止めない理由は、「この祭壇が、また誰かの最後を照らす光になる」――その信念にほかなりません。
地域に根ざし、誠実に歩んできた60年。
これからも武藤はくぜんは、葬儀という儀式を通して人と人の心をつなぎ、次の世代へこの伝統を受け継いでまいります。






